2013年08月21日

センチメンタル

 
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井上陽水のセカンドアルバム「センチメンタル」。
聴き慣れたフォークソングとは異なる陽水独特のシュールな世界観が描かれている。一曲目は「つめたい部屋の世界地図」。本番前、チューニングをしているようなストリングスからはじまる。次第にAmの音に収斂し、ぐっと心がひきつけられた瞬間、音は途切れ、間髪入れずナーバスなアコギのアルペジオが流れる。このわずか数秒の時間に、聴く者は陽水の世界に囚われてしまう。

  つめたい部屋の世界地図

 はるかな はるかな 見知らぬ国へ
 ひとりでいくときは 船のたびがいい
        ・
        ・
        ・
 やさしさがこわれた海の色はたとえようもなくさびしい

 汽笛を鳴らしてすれちがう船 こんにちはのあとは
 すぐにさようなら
        ・
        ・
        ・
 飛び交うカモメは陸が近いのをおしえてくれる

目を閉じ聴き入る。波の音、きらめく光、潮風のにおい、揺れる船の重量感、そしてこの船に乗っている主人公の心情までも、自分のことのようにリアルに感じられる。聴き終わり、曲のタイトル「つめたい部屋の世界地図」を見た瞬間、はっと我に返る。この曲で描かれた主人公は旅をしたのではなく部屋に貼られた地図を見て、イメージの世界を旅していたのだと。そして自分も、曲が流れるている間、異次元の世界を彷徨っていたことにあらためて気がつく。

ほかにも「かんかん照り」「神無月にかこまれて」など「つめたい・・・」同様、陽水の描いた世界をたっぷり堪能することができる。
僕が初期陽水のアルバムの中でいちばん推すのがこの「センチメンタル」だ。72年のリリースなので41年前のアルバムという事実に軽い衝撃を受ける。

録音技術の差はしょうがないとしても、どの曲を聴いても古さはまったく感じない。歌詞はもちろんのことながら、曲作りに対するこだわりは並ではなかったし、非凡な才能はすでに開花していたのだ。
posted by 生出 at 21:59 | Comment(0) | 音楽
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