猪苗代湖を見下ろせるところで、車を停め春霞の磐梯山を眺めていた。ふと眼下に目をやると、白い物体が蠢いている。目を凝らしてみてみると白鳥が一羽、浅瀬に首を突っ込んで食事をしているようだ。
白鳥といえば、すでに北帰行したはずである。聞いた話では、この地に留まり続けている白鳥がいるということだ。
望遠で確認するまでもないが、明らかに白鳥である。本来、群れで行動する白鳥たちであるが、この広い湖にぽつんと一羽でいる気持ちを想像すると、なんだかいたたまれなくなってしまう。いや案外、そんなセンチな気持ちなどなく、独りでいられる歓びを感じているのかもしれない。いずれ確認する術はない。