木漏れ日の射す石段をゆっくりと登る。容赦ない夏の陽は木立の影で少しは和らぐが、容赦ないほど降り注ぐ蝉時雨が身体中から汗を噴き出させる。
気温37度超えの酷暑である。
ここは福島市町庭坂の信達三十三観音、八番札所「清水観音」である。これまで特定の神を信心してきたことはなかったが、歳を重ねると、こういう場所に違和感なく足が向く自分を、客観的にみておかしくなってしまう。これが歳を取るということなのだろう。
山門をくぐると立派な観音堂がある。その手前、右側には大黒様、恵比寿様、布袋様が鎮座している。
小さな池があって、苔むした石の上に大きなカエルがいた。レンズの先端が、カエル君に触りそうになる程近寄っても微動だにしない。聖域に住む彼らにとって、下界の欲深い我々などは眼中にない、そんなそぶりであった。