馴染みの店の暖簾をくぐるのは、たいてい午後6時半か7時頃だろうか。
「らっしゃい、まいど」と店主の挨拶が終わるか終わらないうちに、座り慣れたカウンターの角の席へすべりこむ。
店内はまだまばらで、何処の誰かは判らないがいつも見かける面子がちらほら。
周りをはばかることなく冷えたおしぼりで顔から首筋、腕を拭き、シャツのボタンをひとつふたつ開け、一気に脇の下を攻める。飲む前のミソギを終えると同時に店主は冷え冷えの生ビールのジョッキをカウンターへ置く。最初の一口で、ジョッキの半分を飲み干すのが飲み助の流儀である。
「くぅ〜〜〜っ!」
ジョッキを置き、いつのまにやら置かれていたお通しに目をやる。
今宵のお通しはタコとキュウリの酢の物。割り箸を割ってタコをひとつまみ。コリコリとした食感がたまらない。キュウリはパリパリ。
テレビでは巨人−DeNA戦の中継が始まったようだ。
「今年もまた巨人かねぇ〜」
「さぁ〜どうでしょう。わたしゃ中畑を押していたんですけどね」と店主。
たわいのない会話を交わしつつ、一杯目はすでに空になっている。云うまでもなく二杯目はネクストバッターズサークルで控えている。
「きょうのお勧め、サンマの刺身をちょうだい」
二杯目の三分の一をやっつけたあたりで、いつもの飲み仲間が隣りに座る。さっそく乾杯をする。遅れてきた者は、先行する飲み助に追いつかなければならない。なので彼はジョッキを一気に飲み干すのである。これもまた飲み助の流儀のひとつなのである。まったく意味のないことなのだけどね。むかしからやっているので、今宵もやっただけのことである。
彼の二杯目とサンマの刺身はいっしょにやってきた。二回の裏に同点に追いついた、そんな感じである。
「やっぱりサンマは刺身に限るな」などと知ったようなことを云いながら箸で突く。たっぷりおろし生姜をからめ、醤油はちょんと付け口の中へ滑り込ませる。サンマはほどよくビールの入った腹の中で泳ぐのである。
三杯目、四杯目あたりになると気力、体力、知力も絶好調。舌のスイングは目にも留まらぬ速さである。試合は中盤5回の表ノーアウト一、二塁のチャンス。五杯目は「生」から代打「焼酎の水割り」もしくは「ロック」に代わる。手元の焼き鳥もピーチクパーチク「冷たくなる前に食べてぇ〜」とせがんでいる。いつのまにか他の席も埋まっていて店内は大賑わい。われわれの一挙手一投足は大いに注目されていることを認識する。自意識過剰との声もあるが、そんなことはお構い無しである。
六杯目、七杯目の頃、少しペースが落ちてきたかな・・・と自覚する。油断するとピッチャーの牽制球で刺されることもあるので気を引き締めなければならない。リードは控えめに、つまりはいい気になるなということだ。八杯目は下り坂を転がる勢いを利用するしかない。運よく相手のちょっとしたポカを利用して、二塁ランナーは三塁へと進むことができた。ホームは近いと誰もが思っている。
さていよいよ9杯目である。時計は午後8時の後半、テレビ中継もほどなく終わってしまう。試合は9回の裏である。ここからが勝負どころ。カウンター越しに監督、いや店主がそろそろ試合を決めろとサインを出している。しかしそのサインがよく見えない。一球見送れなのか、いい球が来たら打てなのか・・・。
ええ〜い!ままよ!とばかりフルスイング、9杯目を飲み干す。そしてランナーはホームへ!いつのまにやら店主が頼んだタクシーに滑り込む。タクシーは夜の街から郊外を目指す。
気がつくと布団の上で横になっていた。窓の外は明るい。野球の結果が気になる。その前に昨夜の自分はセーフだったのか、それともアウトだったのか。きっと試合結果は本人には永遠にわからないだろう。そしてその結果を知っている人がいたとしても教えてはならないのである。それが三つ目の飲み助の流儀なのである。
※ちなみに写真と本文の内容は・・・関係のない部分と、関係のある部分が・・・あるかもしれません。
「らっしゃい、まいど」と店主の挨拶が終わるか終わらないうちに、座り慣れたカウンターの角の席へすべりこむ。
店内はまだまばらで、何処の誰かは判らないがいつも見かける面子がちらほら。
周りをはばかることなく冷えたおしぼりで顔から首筋、腕を拭き、シャツのボタンをひとつふたつ開け、一気に脇の下を攻める。飲む前のミソギを終えると同時に店主は冷え冷えの生ビールのジョッキをカウンターへ置く。最初の一口で、ジョッキの半分を飲み干すのが飲み助の流儀である。
「くぅ〜〜〜っ!」
ジョッキを置き、いつのまにやら置かれていたお通しに目をやる。
今宵のお通しはタコとキュウリの酢の物。割り箸を割ってタコをひとつまみ。コリコリとした食感がたまらない。キュウリはパリパリ。
テレビでは巨人−DeNA戦の中継が始まったようだ。
「今年もまた巨人かねぇ〜」
「さぁ〜どうでしょう。わたしゃ中畑を押していたんですけどね」と店主。
たわいのない会話を交わしつつ、一杯目はすでに空になっている。云うまでもなく二杯目はネクストバッターズサークルで控えている。
「きょうのお勧め、サンマの刺身をちょうだい」
二杯目の三分の一をやっつけたあたりで、いつもの飲み仲間が隣りに座る。さっそく乾杯をする。遅れてきた者は、先行する飲み助に追いつかなければならない。なので彼はジョッキを一気に飲み干すのである。これもまた飲み助の流儀のひとつなのである。まったく意味のないことなのだけどね。むかしからやっているので、今宵もやっただけのことである。
彼の二杯目とサンマの刺身はいっしょにやってきた。二回の裏に同点に追いついた、そんな感じである。
「やっぱりサンマは刺身に限るな」などと知ったようなことを云いながら箸で突く。たっぷりおろし生姜をからめ、醤油はちょんと付け口の中へ滑り込ませる。サンマはほどよくビールの入った腹の中で泳ぐのである。
三杯目、四杯目あたりになると気力、体力、知力も絶好調。舌のスイングは目にも留まらぬ速さである。試合は中盤5回の表ノーアウト一、二塁のチャンス。五杯目は「生」から代打「焼酎の水割り」もしくは「ロック」に代わる。手元の焼き鳥もピーチクパーチク「冷たくなる前に食べてぇ〜」とせがんでいる。いつのまにか他の席も埋まっていて店内は大賑わい。われわれの一挙手一投足は大いに注目されていることを認識する。自意識過剰との声もあるが、そんなことはお構い無しである。
六杯目、七杯目の頃、少しペースが落ちてきたかな・・・と自覚する。油断するとピッチャーの牽制球で刺されることもあるので気を引き締めなければならない。リードは控えめに、つまりはいい気になるなということだ。八杯目は下り坂を転がる勢いを利用するしかない。運よく相手のちょっとしたポカを利用して、二塁ランナーは三塁へと進むことができた。ホームは近いと誰もが思っている。
さていよいよ9杯目である。時計は午後8時の後半、テレビ中継もほどなく終わってしまう。試合は9回の裏である。ここからが勝負どころ。カウンター越しに監督、いや店主がそろそろ試合を決めろとサインを出している。しかしそのサインがよく見えない。一球見送れなのか、いい球が来たら打てなのか・・・。
ええ〜い!ままよ!とばかりフルスイング、9杯目を飲み干す。そしてランナーはホームへ!いつのまにやら店主が頼んだタクシーに滑り込む。タクシーは夜の街から郊外を目指す。
気がつくと布団の上で横になっていた。窓の外は明るい。野球の結果が気になる。その前に昨夜の自分はセーフだったのか、それともアウトだったのか。きっと試合結果は本人には永遠にわからないだろう。そしてその結果を知っている人がいたとしても教えてはならないのである。それが三つ目の飲み助の流儀なのである。
※ちなみに写真と本文の内容は・・・関係のない部分と、関係のある部分が・・・あるかもしれません。
いやー、失礼いたしました。
軽い感じで聞いていたので、日時を間違えて記憶しておりました。
柳田様にも、申し訳ありませんでしたーーー! momozo
◇問題はありません。次回はぜひみんなで楽しくやりましょう。万が一遅れてきても一気飲みなどは強要いたしません(笑) それぞれマイペースで過ごせればと思っております。