
Bruce Cockburn(ブルース・コバーン)の「High Winds White Sky」、邦題は「雪の世界」。71年のリリース。手元にはBruce Cockburnのアルバムが5〜6枚あるが、今晩はこのアルバムを聴いている。なぜなら雪が降ったからだ。それもいきなりの本格的な降雪である。峠道ではスリップ事故が多発。秋を十分に堪能する間もなく冬を迎えてしまった感じだ。晩秋〜初冬の風情は雪の下に埋もれてしまった。
人は生まれ育った環境の中で審美眼が磨かれる。親の教育や躾はもちろんだが、環境が、その人をその人たらしめるのに、大きな力を貸している。審美眼の長けている人が作った作品からは多くの刺激を受け、新しい表現が生まれるヒントになることもあるだろう。例えそうでなくても、その後の人生が思慮深くなったり・・・と大きな影響を受けるのである。
このアルバムを耳にして、そんなことを何故かいちばんに感じてしまった。たいていは、いい曲だな・・・或いは、ちょっとね・・・などと良し悪し、好き嫌いという短絡的な判断をしてしまうことが多いのだが、Bruceの奏でる音に接すると、自らの生きてきた過程、環境にまで思いを馳せてしまう。同時にBruce Cockburnは、きっと素敵な環境で生きてきたのだろうなと勝手にあれこれ想像している。哲学的とまではいかないにしても、何かを省みる気持ちにさせる作品だ。
楽曲はアコースティックギターを中心にしたシンプルな構成で聴く耳を飽きさせない。フォーク、ブルース、カントリーのテイストが随所にちりばめられている。聞き慣れたお決まりのフレーズを単に移植するのではなく、ちゃんと彼独自の味付けがされている。インスト好きにも十分楽しめるギタープレーだ。Bruce Cockburnはかつてバークリー音楽院に入学し、ジャズについてのセオリーや作曲法、実技を学んだそうだ。そんな経緯が彼の表現を味わい深いものにしているのだろう。音楽性はきわめて高い。
ログハウスで、それも薪ストーブの炎を見ながら聴ければさらによい。そんな環境を持てる人は限られるだろうが、目を閉じ勝手にそんな想像するだけでも、心がほっこり暖かくなるのである。