
高田渡が亡くなる前年の2004年に発表された「タカダワタル的」。高田渡を追ったドキュメンタリー映画のDVDである。監督はタナダユキ。孤高のとか、伝説のとか、人間国宝とか・・・いろいろ形容詞がつけられる高田渡だが、もういないんだぁ〜と思うと、妙にシンミリしてしまう。彼の音楽人生の中で、いちばん注目されたアルバムだったかもしれない。
中津川フォークジャンボリーで「ごあいさつ」を唄う若かりし頃のシーンで始まり、そしてラストも「ごあいさつ」。「よろしく」と「さよなら」のご挨拶を意識してのことか?まさか翌年、鬼籍に入るとは、本人もスタッフも思いもしなかっただろう。
高田渡の存在は、かなり前から知っていたけれど、数枚のアルバムを手にしたのは、彼が亡くなってからだった。福島市内で写真店を開いていたS氏にギターを教えてもらったのがきっかけだった。このDVDを見ると、きまってS氏を思い出すのだ。
S氏は、かつて高田渡を師と仰ぐミュージシャン志望の青年であった。高田渡に惚れ込み、まず住処を探り当てた。次に常連の喫茶店を見つけ、そこの店員になった。その時点で大学を中退。店に来た高田渡に顔を覚えてもらうのに約一年。ようやく声をかけるタイミングを見つけ、恐る恐る声をかける。「じゃあ〜今度遊びにきたら」と。そしてついには高田渡のライブの前に、ステージに立つまでになった。ライブの会場はマンダラ2だったかどうかは聞けなかった。
数年前、S氏は写真店を閉じ、いまは福島市内の家電量販店にいるとか・・・。もう5年以上お会いしていない。
「ブルース」
泣くなんて ちいさなこと
ため息つくなんて つまらないこと
バイ バイ バイ
なのに そのふたつの
大きさを とりかえ とりかえして
男も女も死んでいく
※この曲はDVDには収められていない。
あ〜そうなのか、と妙に実感してしまった。年を重ねると、なんだか肉体が邪魔に思える瞬間がある(笑) 高田渡は、きっと今頃自由に飛び回っているのだろう。そうだ、S氏に会いにいかなければならない。