2012年02月29日

自画(写)像


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 自分を客観的に見ることは、とても難しいし、恥ずかしいことである。
 これまでの自分の所業は、どれをとっても、まともなものはないし、できることなら「燃えるゴミの日」に、まとめて捨ててしまいたいくらいだ。

 たいていの人は録音した自分の声に対して嫌悪感を覚えることだろう。毎日、誰よりもそばで聞いている自分の声。しかし再生された声は、この世の中で、いちばん醜い声にしか聞こえない。声ですらその程度の認識なのだ。
 常に自分の身を傷つかない安全な場所に置こうとし、興味の赴くまま、好奇心を刺激するものだけを単に見続ける毎日。けっして自分を振り返ろうとはしない。自分のことをいちばん知らない、知ろうとしないのは自分自身なのである。
 
 画家は自己の内面を見つめるため自画像を描く。欧羅巴には500年以上、自画像の歴史があるのだとか。自画像を描くことは、自己との対決であり、その厳しい作業に耐えうるだけの精神力も必要だ。自分を見極めたとき、きっと新しい道、表現の切り口が見出せるのだろう。

 と、判ったようなことは、簡単に云えてしまう、このイヤらしさ・・・。自分を客観的に見るなんてことは、そう容易く出来る筈がない。

 さて、自画像ならぬ「自写像」である。飲み会が終わり、ビジネスホテルでの撮影。鏡に映る自分にレンズを向けてみる。なんてコメントしたらいいのか、わからない(笑)
 ひとつだけ、妙に得心のいったことは・・・生きている限り、何かの枠に囚われ続けるのだな、ということ。撮影時、鏡の枠の中にしっかり囚われている。明日になれば生業の枠の中で喘ぎながら過ごすわけだし、いずれ枠から抜け出すことは不可能なのだ。そもそも写真撮影そのものが、枠を意識した行為ではないか。

 話は急に変わってしまうが、過日叔母に会ったところ「最近、お父さんに似てきたね」。明日は父の一周忌であった。父の枠からも抜けることはできない。いや、それはむしろ当たり前のことなのではないか・・・ようやく、そういうことを素直に受け入れられる歳になったということか。
posted by 生出 at 22:07 | Comment(0) | その他

2012年02月27日

雅の窓から


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 淹れたての珈琲から、ほのかに湯気がたちのぼる。

 カウンター席に座り、窓から行き交う車や人を、ぼ〜っとしながら眺めるのが好きだ。

 小雪がちらつく寒い日、中年のサラリーマンはコートの襟を立て先を急ぐ。老人は背中を丸め、うつむきながら歩を進める。バス停にたむろする高校生は寒さ知らず。

 バスが到着すると、どっと人が吐き出される。誰もが寒風に身構えて、それぞれの目的地へと向かう。

 その中に見覚えのある後姿を見かけた。窓から見える範囲は限られているから、すぐにそのひとの姿は見えなくなってしまった。

 器に目を戻すと、たちのぼった湯気のせいか、目の前が潤んで見えた。
posted by 生出 at 19:51 | Comment(0) | 馴染みの店

2012年02月24日

Live'73


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 やっぱりたくろうネタが続いてしまった。こうなる予感はしていた・・・。

 73年リリースの「Live '73」。同年11月26〜27日に東京中野サンプラザホールで行われたライブ音源が収録されている。発売が12月下旬だから、かなりタイトなスケジュールで 作成されたようだ。前出の「今はまだ人生を語らず」「元気です」とこのライブ盤が初期たくろうの代表的なアルバムだ。

 あまりゴシップ的な事は記したくはないのだけど、この年の6月に婦女暴行容疑でたくろうは逮捕されてしまう。のちに被害者とされた女性の狂言であることが判明し不起訴になったようだが、加川良はアルバム「アウト・オブ・マインド」で、早速、このいわゆる「金沢事件」をモチーフにした“2分間のバラッド”という曲を唄っている。
 曲中、ピー音が連発し、なんとも意味深な印象を覚えるが、たくろうと加川良の間柄を考えると、たくろうの事件に対する心情、真相を代弁しているのでは、と僕は思っている。

 話がそれてしまったが、この「Live '73」でいちばんの人気は何と云っても“落陽”だろう。リードギターは、あの高中正義である。このライブにも石川鷹彦、松任谷正隆が参加している。大掛かりなブラスセッションを加え、当時の僕は、これはフォークというよりロックに近いのではないか?と感じたものだ。
 僕のお気に入りは「都万の秋」「むなしさだけがあった」「雨が空から降れば」である。どの曲も他に比べフォークソング的。とくに「雨が・・・」は小室等やかぐや姫と聴き比べてみると、この曲の持つエッセンスをいちばん醸し出しているように思っている。フラットマンドリンの音が、雨の情景をイメージさせるのに効果的。
 ラストの「望みをすてろ」は「人間なんて」に匹敵するほどたくろうがシャウトしている。Saitouくんと一緒にギターをかき鳴らし、勢い余って弦を切ってしまった。Saitouくん、いま何をしているのかなぁ〜?
posted by 生出 at 19:37 | Comment(0) | 音楽

2012年02月22日

元気です


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  アコースティックギターを弾くきっかけを与えてくれた、いくつかのアルバムの中の一枚、よしだたくろうの「元気です」。1972年リリース。
宮中(みやちゅう・・・宮の原中学校ね)の同級生のSaitouくんから借りて聴いたのが最初で、しばらくはダビングしてもらったカセットテープを聴いていた。自分の小遣いで購入できたのは中学2年になってからであった。
 “春だったね”から“ガラスの言葉”まで全15曲。どの曲も当時のたくろうの個性が全面に出ている。まったくもってぶっきら棒で、誰に媚びる事もなく、こう歌いたいんだから歌んだよという、たくろうのストレートすぎるくらいの気持ちが伝わってくる。一曲一曲のカラーは全然違うのだけど、アルバムとしてのまとまり、つまり曲順にしても、これしかないし、どの曲が抜けても、他の曲が入ってもこのアルバムは成立しなかったのでは?と思わせるほど完成度は高い。たくろうフリークにもっとも人気のあるアルバムが、この「元気です」である。
 参加ミュージシャンには石川鷹彦、松任谷正隆(奥さんはユーミン)がいる。
 アルバムの中でたくろうのGibson J-45が炸裂している。とくに“リンゴ”、“高円寺”はギターオヤジにはたまらない楽曲。「今はまだ人生を語らず」とは異なる疾走感が「元気です」にはある。この疾走感こそが、この時代のたくろうのカッコウ良さであったのだろう。
posted by 生出 at 21:18 | Comment(2) | 音楽

2012年02月20日

今はまだ人生を語らず


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 気がつけば人生半世紀。早いものである。人生の折り返し地点はとっくに過ぎ、残された時間はどのくらいなのだろうか?そんなことを意識する今日このごろ。飛ぶように流れる時間に唖然としながらも、いまだにやりたいことと、やれることの見極めもままならず、がむしゃらに走っている。

 よしだたくろうの「今はまだ人生を語らず」は1974年のリリース。当時僕は中学生。深夜放送から流れてきたたくろうの声に、これまで聞いたことのないグルーブ感を覚え心を震わせた。

 エネルギッシュで粗野で強引で荒々しく・・・だけどたくろうのメッセージは、周りの大人の・・・いつだって押し付けがましく、ひどく保守的で退屈極まりない・・・正論・常識を吹き飛ばす力があった。それは一瞬の出来事だった。

  朝日がぁ〜 昇るから起きるんじゃなくてぇ〜
  目覚めるときだからぁ〜 旅をするぅ〜

  嵐の中にぃ〜 人の姿を見たらぁ〜
  消え入るようなぁ〜 叫びをきこぉ〜

  目の前のコップの水を〜 一息に飲み干せばぁ〜
  傷も癒えるしぃ〜 それからでも遅くはない〜

  いまはまだまだぁ〜 人生を語らずぅ〜
  目の前にもぉ〜 まだ道はなしぃ〜
  越えるものはすべてぇ〜 手探りの中でぇ〜
  見知らぬ旅人にぃ〜 夢よ多かれぇ〜

  越えて行けそこを〜 越えて行けそれを〜
  いまはまだぁ〜 人生を〜人生を語らずぅ〜

もしかしたらいまの僕の人生のベクトルは、あの深夜放送を聴いたときに決められてしまったのかも? 
越えるべき山は、まだまだありそうだ。 
posted by 生出 at 22:21 | Comment(0) | 音楽

2012年02月19日

「ハマった〜」の図


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 裏磐梯にて。通り慣れた林道にアクセスして数メートル進んだところで、この有様である。ラインをほんの少し見誤ったのが原因。前後デフロックを備えているものの、こうなると万歳をするしかない。お世話になっているペンションのオーナーさんに連絡をして事なきをえたが、なんともお恥ずかしい図である。人間、恥をかかなければ成長しない、これが僕の持論である。失敗には教訓が満ちている。
 ※翌日、別な場所でハマったが自力脱出。まだまだ修行が足りない。
posted by 生出 at 18:41 | Comment(0) | クルマ

2012年02月16日

珈琲舍 雅


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 「美味しさ」など、感覚に訴える経験を第三者に伝えるのは難しい。シンプルに美味いと云ってもでもいいだろうし、言葉を巧みに使って表現するのもいいだろう。僕的に表現するならば・・・ここに一杯の珈琲がある。口に含んだのち喉元を過ぎると単純に胃に落ち込むだけではなく、瞬時に体液と同化する・・・。満足するのは胃袋だけではない。体全体が悦ぶのだ。

 それが雅の珈琲なのである。

 シンプルで落ち着いた店内で飲むのも良し、豆を買って自宅で飲むのも良し。珈琲舍 雅のサイトはこちら。随時イベントも開催しているので要チェック。
posted by 生出 at 21:56 | Comment(0) | 馴染みの店

2012年02月14日

いや〜、まいった。


 

 何を隠そう私は宇都宮市立「宮の原中学校」を卒業している。同じクラスのkuwakuboくんは中学生にしてバンジョー弾きの名手であった。アコースティックギターをようやく弾き始めた僕は、FやBなどの、いわゆるバレーコードを押さえるだけでも四苦八苦しているというのに、kuwakuboくんは5弦バンジョーで「Foggy Mountain Breakdown」をさらりと弾いてしまうもだから、同級生のみならず、楽器屋の店長とか、周囲の大人からも一目も二目もおかれていた。音楽に関しては実に早熟なひとだった。

 kubotaくんから「これを聴くといい」と渡されたLPが・・・記憶がおぼろげだけど確Bill Monroeのアルバムだった。Bill Monroeといえばブルーグラスを語る上で絶対に外すことの出来ない人物である。マンドリンの名手。
 
正直、当時の僕は、そのアルバムを味わうことすらできないほど幼かった。何しろ吉田拓郎の「春だったね」をようやくシャカシャカ弾けるようになったレベルである。

 つい最近、
Martin Tallstromというギタリストのサイトにぶちあたった。なんとアコースティックギターで「Foggy Mountain Breakdown」が演奏されているではないか。そしてTAB譜が無料でダウンロードができてしまうオマケまで付いていたのである。早速DLしてみたが、すぐに自分のレベルの低さを思い知ったのと同時にkuwakubotaくんの顔が思い浮かんだ。「おいでくんは、どのくらい大人になったの?」と彼の声が聞こえてきそうだ。

 それにしても実に気持ちのいい弾きっぷりである。これだけ弾けたらなぁ〜。僕は、ただただ指を喰わえているだけなのであった。まだまだお子ちゃまです。
posted by 生出 at 22:31 | Comment(0) | アコギ

柳田利美さん写真展「花見山花候」のご案内


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 過日、某所にて写真家・柳田利美さんとお会いする機会があり、写真展開催のご案内をいただきました。
 写真展の詳細はこちらから。

「今回の作品展は昨年の東日本大震災の影響で一年遅れの開催となっております。延期となる前に揃えた写真と震災後の写真を加え、改めて構成しなおしました。現在も原発事故の影響を受けたままの花見山公園ですが、花たちの元気な姿に出会っていただければと思います」

 花見山のことは柳田さんに、というくらい通いつめていらっしゃる。柳田さんのサイトには、リアルタイムで花見山の情報が掲載されています。ぜひアクセスしてみてください。
posted by 生出 at 21:37 | Comment(0) | 写真展・絵画展など

2012年02月11日

明日が最終日


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 先日、ご案内いたしました「フォト・クラウド」写真展は、明日2月12日(日)が最終日です。本日私もお邪魔させていただきました。会場には多くの風景写真ファンが訪れていました。会場では、あちこちで写真談義に花が咲いていて、会長の和田さんも写真の説明に大忙しといったところ。
 明日は午後5時までです。各会員の力作をぜひご覧ください。
posted by 生出 at 21:57 | Comment(2) | 写真展・絵画展など

2012年02月08日

酒味寿・・・しみず


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 福島駅東口、東北電力ビルのはす向かいに、赤提灯を灯している数軒の飲屋さんの入った雑居ビルがある。そこに、このお店「酒味寿(しみず)」はある。ひょんなことから、暖簾をくぐるご縁を結ばさせていただいた。
 お母さん曰く「個性は、けっして消してはいけない。村社会日本では、平均的で当たり障りのない人を演じることを良しとするようだが、それは間違っている・・・。」 ともすれば生き方に甘さのある自分を戒めてくれるのが、酒味寿のお母さんなのである。

 またベロンベロンに酔っぱらってしまいましたよ。
posted by 生出 at 23:10 | Comment(0) | 馴染みの店

2012年02月07日

写真展のご案内

          フォト・クラウド写真展

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                                     「初冬の里山」(c)安田光夫
                      
 ◇日 時  平成24年2月10日(金)〜12日(日)
       10:00〜18:00(最終日17:00まで)

 ◇場 所  郡山市民ふれあいプラザ(郡山駅前ビッグアイ6階)

 ◇会 員  泉田  照  入部 守弘  金沢 富江
    (敬称略)  佐藤 一朗  鈴木 國雄  千葉 勇雄
            半澤 眞一  藤田 一成  安田 光夫
            山岡  哲  和田 政雄(会長) 
              
    皆様のご来場をお待ちしております。
posted by 生出 at 20:58 | Comment(1) | 写真展・絵画展など

2012年02月06日

宮森さん


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 さて・・・宮森さんである。いまや銀塩の中古カメラを中心にご商売をされているカメラ店は全国に何軒あるのだろうか?宮森さんのお店でも数台のデジカメ(コンデジのみ)の在庫はあるものの、圧倒的に数を誇るのは銀塩カメラなのである。それもライカやローライなどの高級舶来品は皆無。国産の実用機が中心というから、商売っ気の無さに、こちらとしても「だいじょうぶなのか?」と心配しているところではある。

 しかしそれは杞憂なのである。

 宮森さんの顔を見てほしい。私がカメラを構えていることなど、まったく眼中にない。熱のこもった写真の話は、まさに選挙の演説のごとく、いやそれ以上に熱いものがある。話し始めると、もう止まらない。私は、宮森さんの表情を見て、ロバート・キャパが撮影したトロツキーの写真がダブってしまったくらいである。決して私の写真とキャパの写真を比べるなどと云う大それたことではなく、トロツキーがデンマークでロシア革命の歴史を講演したのと同等のエネルギーを、宮森さんは写真に注いでいることを云いたいのである。

 この道30年の大ベテラン。農蚕高校を卒業した後、海上自衛隊に入隊するも、一身上の都合により半年で脱走。以来、陸(おか)に上がり銀塩写真の伝道師となる。店内にモノクロ暗室あり。自家現像機(35ミリポジ)あり。

 魅力満載の宮森さんのお店の詳細は後日。乞うご期待。

 
posted by 生出 at 22:56 | Comment(2) | 馴染みの店

2012年02月04日

ブログ、スタート。

 
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 本日よりブログを開始いたしました。BBSは終了いたします。これまで書き込みいただきました皆様、ほんとうにありがとうございました。BBS同様、ブログもご覧いただければ幸いです。

 さて今日は立春。暦の上では春だが、会津地方は朝から間断なく雪が降り続いている。いまも外は白い雪。

 さて記念すべきブログの第一回めは、僕の行きつけの喫茶店・珈琲舍「うつわ」をご紹介しよう。いま流行のカフェでは味わえない落ち着いた雰囲気が、ここにはある。
 この写真はマスターの弾き語りの図。甘い声を聞きながら、ちょいと酸味のある珈琲をいただく時間は、まさに至福のひととき。マスターは音楽、山(山菜、キノコ採りはプロ)、文化、歴史・・・など、あらゆる分野を独自の視点で見つめてきただけあって、話はいつも大いに盛り上がる。
 お店は喜多方らしく落ち着いたたたずまいの蔵作り。2階はギャラリースペースで、地元のいろいろな作家さんのすばらしい作品と出逢えることができる。
 珈琲はもちろんのこと、どこか懐かしさが漂うナポリタンの味は一押し。喜多方プラザを目指してくるとわかりやすい。プラザを正面に見て、左側に位置している。
posted by 生出 at 19:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 馴染みの店